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どうしても続きが気になり、他のことはそっちのけで「半分の月がのぼる空」全8巻を読んでしまった。色々と書きたいことはたくさんあるけど、ネタバレのオンパレードになってしまうので極力控えることにする。

この作品で重要なのは、何かを選ぶには何かを捨てなければいけないこと。夏目先生は自分の出世の道を捨ててまで残り少ない奥さんの命に人生を捧げたし、裕一はいつ終わるともしれない里香の人生と共に歩むことを選んだ。彼らが経験しているの、実際にある病気であり、この世のどこかで必ず起こっている現実、誰しも起こりうる可能性……。その中で何かを選択する。

「その両手は何かを掴むためにある」

そう夏目先生が言っていたが、このセリフこそがこの作品を象徴する言葉だ。両手で掴める物は一つしかない。それは夢であったり大切な人であったり……。その何かを選んだとき、別の何かを取りこぼしてしまう。それが普通の人生であり、いくつも手に入れるのは奇跡だと言える。だからこそ両手に掴んだ物を手放さぬように必死になれるのだろう。

私の両手は何かを掴むことが出来ただろうか……(いや、まだ何も……)。

それにしても里香は本当に素直だな。裕一と結ばれても言いたいことははっきり言うし、気に入らなければ罵倒するわ蹴飛ばすわ……なのに甘えるときは照れ隠しをするし。けして感情を抑えたりはしない。それを理解してるからか、裕一は里香を家に閉じ込めたりせず、学校やバイトなど好きなことをさせている。そんな裕一に支えられてるからこそ、里香も自由に生きられる。本当に2人は信頼しあってるんだな、そう強く思える。

明日か明後日か、5年後か、10年後か。命尽きるその時まで共に歩んでいこう。それが裕一と里香が選び取った、その両手に掴んだ人生なのだ。
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「半分の月がのぼる空」という小説を今頃はまって読んでいるのだが、これがまたライトノベルズでは異色な恋愛小説なのだ。ライトノベルズは若者向けだから恋愛の要素はあるのが当たり前だが、SFやファンタジーだったりコメディだったりする。だが、この作品は恋愛だけに絞った純愛ストーリーなのだ。よくあるテレビドラマのようにライバルや三角関係も存在しない、本当に純粋の……。
A型肝炎で入院した17歳の少年、戎崎裕一が、同じ病院に心臓疾患で入院している秋庭里香に出会う。だが、彼女はものすごくわがままで自分勝手ですぐ怒 る、恐ろしい性格の持ち主なのだ。まあ、その性格にも色々と理由があるわけで……。で、見た目はもの凄く美人だし、時折見せる優しさと笑顔に裕一は恋に落 ちる。 そして、一巻の終わりの事件がきっかけに、里香も裕一を好きになるのだが……。

簡単に言うと、2人が出会って恋に落ち、支え合い共に歩いていこう、という話。でも、里香の病気に問題があって……。一度発作を起こせば即死に繋がる危険 性をはらんでいる。弁膜が悪くて移植しか治療法が無く、それも完治はせず延命にしかならない。いつ終わるともしれない生活を続けていかなければならないの だ。

作中で里香が死についてこう言っていた。

「ずっとずっとおとなしく待ってるだけなんだけどね、絶対にいなくならないの。わかるのよ、そばにいるのが。手を伸ばしたら、たぶん触れるわ。それでわたしをどこかへつれていっちゃうの」

私には彼女の気持ちが少しは分かる。私自身も筋ジストロフィーという病気で、彼女ほど近くはないが目の届く範囲に死がある。多くの同じ病気の友人が亡くなるのを見てきたからだ。自分もいつかこうなるのだと。

最初は里香は死ぬ覚悟を求めていた。しかし、裕一に出会って裕一に大切にされ、生きるための覚悟を決める。それがどれだけ辛い選択でも一日一日を一生懸命生きていく。それが本当の幸せだと知ったから。

2人の生き様を追えば追うほど羨ましくなる。私自身が17才の時、色んなことに真剣になれただろうか。確かに、たいして能力もなく、努力もせずにいた気が する。その上、病気の知識だけは人一倍あって、病気を言い訳にして色んなことから逃げていたと思う。今だって人生から逃げてるような物 だ。趣味はいっぱいあるし、結構楽しく暮らしている。でも、どこかで自分を偽り、人を欺き、色々なことから目を背けている。生きることに真剣に向き合って いない。この記事を書いている最中も、病気だから仕方ないじゃん、と心のどこかで言い訳している自分がいる。それでもやっぱり変わろうとはしないんだろ な。ああ……ホントに2人が羨ましいよ……。

「半分の月がのぼる空」

この本は若い人だけではなく、かつて17才だった人にも読んでもらいたい。1年前の人も50年前の人も。ライトノベルズだからと言って敬遠しないでね。
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プロフィール
HN:
やっちん
年齢:
44
性別:
男性
誕生日:
1981/01/19
趣味:
アニメ鑑賞 ゲーム 読書
自己紹介:
難病筋ジストロフィーを病気に持ち、専門病院で療養している。というと可哀想に聞こえるが、テレビやパソコンを自由に出来るため、楽しく生活している。そのため、趣味に事欠かない。
体力的、機能的に制限があるので本当の自由とは言えないが。
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